発行日:令和4年9月5日
ICTを活用したフレイル予防研究会事務局
第1回 ICTを活用したフレイル予防研究会 開催報告
この度、ICTの効果的な活用を通じた介護・フレイル予防事業の推進を目的として「ICTを活用したフレイル予防研究会」を設立いたしました。本研究会は、高齢者支援の取組にICTを効果的に活用するための好事例や実施のポイントのノウハウ共有および自治体職員様同士の情報交換・交流機会の提供を目的としています。
研究会の第一回目を令和4年8月25日に開催いたしましたので以下の通り、開催報告をいたします。
1.開催内容
- 主催:ICTを活用したフレイル予防研究会事務局(エーテンラボ株式会社内)
- 日時:令和4年8月25日(木)13:30~15:00
- 流れ:
- 第一部 自治体の高齢者支援事業におけるICT活用状況に関する実態調査報告
- 第二部 ゲストスピーチ 府中市福祉保健部高齢者支援課 介護予防生活支援担当 主査 平澤 章子様 「府中市の習慣化アプリみんチャレを活用したフレイル予防事業」
- 第三部 ゲストスピーチに基づく意見交換会
- 会場: オンライン(Zoom開催)
- 参加費:無料
- 出席:高齢者支援の取組に関わる全国52自治体, 他関連組織3団体 ※第一回ご欠席を含む、ICTを活用したフレイル予防研究会の入会は全国91自治体
- 研究会の様子
各部の概要を以下に記します。
1-1. 実態調査報告
1-1-1. 本調査の背景と目的
超高齢社会の最中、昨今のコロナ禍で高齢者のフレイル対策や社会参加の支援は待ったなしの喫緊の課題である。その対策として、自治体の高齢者支援の取組にICTが活用され始めたが、その効果的な活用には好事例や実施のポイント等の情報が不足している。
現状の自治体の取組状況やその内容を調査し、ICTを活用した高齢者支援の取組に関する実態や効果的な実施のための工夫を明らかにする。他の自治体が施策検討を行う際に参考となるよう広く調査結果を共有し、情報提供を行う。
1-1-2. 調査結果
75自治体からのアンケートにより以下に示す調査結果が得られた。
- 調査により、32.0%の自治体が現在ICTを活用した事業を実施しており、69.3%の自治体がICTの活用を希望していた。コロナ禍をきっかけとして自治体の高齢者支援事業においてICT活用の関心の高まりが見て取れた。
- ICTを活用した取組を実施している自治体では、幅広い目的でICTリテラシーの向上を支援する取組やICTを活用した事業が複数実施・展開されている。
- 財源として、補助金の活用は47.6%であった。厚労省の補助金は一定活用されている一方、内閣府や総務省の補助金活用例は見られず、予算確保が課題であることからも国の補助金の活用余地があることがわかった。
- ICTを活用した取組で成果を上げるためには、基本的な環境整備・人員教育などの対策に加えて、高齢者の参加率および継続率を高める仕掛けが工夫されている。
- ICT事業に関心がある自治体からは他自治体の好事例の共有が強く望まれている。
1-2. 府中市様のゲストスピーチ「府中市の習慣化アプリ「みんチャレ」を活用したフレイル予防事業」
1-2-1. 背景と課題
- 府中市は、人口26万人の東京都内自治体であり、平成18年に全国に先駆けて介護予防推進センターを設置し、同介護予防推進センターと地域包括支援センター(市内11カ所)に介護予防の専任担当として「介護予防コーディネーター(KC)」を各1名配置し介護予防に注力している。また、市民協働の取組も盛んな地域である。
- コロナ禍で通いの場への通所が困難になり、市民同士の自主グループでの自主的な介護予防活動も停止していることに危機感を感じ、関東経済産業局主催の自治体とヘルスケア関連ベンチャー企業等共創プログラム「ガバメントピッチ(令和2年度)」に参加して、市民同士が「つながる」介護予防をテーマに共創パートナーを募集した。
- その結果、エーテンラボ株式会社の習慣化アプリみんチャレを活用した介護予防事業の提案を採択し令和3年度から一般介護予防事業として事業を実施している。
1-2-2. ICTを活用した取組内容
- 府中市では、習慣化アプリみんチャレの使い方講座を地域包括支援センター等で実施し、高齢者同士がつながり自力でフレイル予防を継続できるよう支援している。
- 習慣化アプリみんチャレは、同じ目標の仲間同士5人1組のチームに参加し日々の歩数や写真をチームに報告する無料のスマートフォンアプリであり、アプリを続けて貯めたコインを地域の社会貢献活動に寄付する機能がある。府中市では市内の大学生への食料支援の寄付プロジェクトを実施しており、高齢者に好評で寄付があるから続けたいという声を多く聞いている。
- 令和3年度の参加者は199名でアプリの180日継続率は58%、アプリ利用10ヶ月後に参加者の平均歩数が1,600歩向上した。
- 事業の参加者からは「アプリがあるから散歩に行かなきゃと思う」「チームでわきあいあいとやっている」「今まで空の写真なんて撮ったことなかったけど、写真を撮ることで今まで感じなかったことを感じています。楽しいです」といった前向きな感想が集まっている。
- 今後は、地域包括支援センターの職員が講座の講師を担当する等、地域での自走化を目指した取り組みに注力していく。
- (参考)府中市公式HP
1-3. 自治体職員様同士のグループトーク
地域や人口規模が比較的近い4~5自治体同士1グループ(合計9グループ)となり、Zoomのブレイクアウトルームに分かれて、各自治体の取組について意見交換を行った。各グループには事務局1名がファシリテーターとして参加した。
2.開催アンケート結果
・回答数:40自治体
・結果
・研究会の参加目的は「情報収集」が最も多い。
・回答した40自治体のうち、97.5%が参加してよかったと回答。
・各部の満足度は、第二部府中市様の講演が極めて高かった。 第一部、第三部含めて97%以上がよかったと回答。
3.総括
全国的に、高齢者支援事業におけるICT活用の関心が高いことが調査により明らかになり、他自治体のICT活用事業について具体的な事例共有がなされる貴重な機会となった。また、第三部のグループトークでは、4〜5自治体1グループに分かれて双方向的な情報交換がなされた。
参考:第一回研究会の感想(開催アンケート回答より抜粋)
ICTを活用した取り組みについて他自治体も関心が高いことが窺えた。実際に取り組んでいるところは少ないようだが、このような機会を通して情報収集、情報交換ができれば良いと思う。
ICT活用については,まだ情報が少ないため有意義な時間となった。
近隣市のオンライン活用の成功事例を聞けて、実際に質問できてよかった
自治体として介護予防に資するアプリの導入によりどのような効果があったか、参考になった
他自治体の実施状況を伺う機会がなかったため。
他自治体の取組みについて、担当者の方から進め方の実際や苦労した点等お聞きする事ができたのは貴重な機会となりました。
第一部・第二部では、実態調査結果や、府中市さんの「みんチャレ」のような先行事例に関する情報について詳しく共有していただいた。その中で、ICTに関心の低い層へのアプローチや支援体制、実施に係る各方面との合意形成の重要性などを再確認することができたため。
調査報告により全国の実態が把握できた。